乳がん

はじめに

 現在1年間に乳がんにかかる人は3万5千人くらいいます。また乳がんで亡くなる人は9千人くらいです。女性のがんによる死亡は、現在は胃がんが一番多いのですが、近い将来には乳がんが一番になるであろうと考えられいます。
 幸い、乳がんはがんの中でも比較的早期発見がしやすく、また治りやすいがんと考えられています。とくに、自己検診(発見)のできる唯一のがんです。あるいは、集団検診も普及していますので、ぜひ早期発見、早期治療をされるようにしていただきたいと思います。
ところで、乳房の病気は産婦人科だと思っている人もみえるようですが、外科があつかう病気ですので外科外来を受診してください。病院によっては乳腺外来として独立しているところもあります。

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乳がんにかかりやすい年齢、タイプ

20才代の人にはほとんどみられず、30才代とくに35才くらいから増えはじめ40才代、50才代の人に多く見られます。
また、・親、姉妹が乳がんの人、・独身の人、・晩婚の人、・子供の数が少ないとか出産年齢の遅い人、・高カロリー、高脂肪の食事の多い肥満ぎみの人などが乳がんにかかりやすいタイプといわれています。しかし、あまりこれにこだわる必要はないと思われます。

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乳がんの症状

乳房のしこり

乳がんはたいてい“しこり”に気づいて発見されることが多いのですが、かならずしもしこりのあるものがすべてがんというわけではありません。また、しこりを触れなくてもがんのことがあります。たとえば、乳首から血やうみのようなものが出るときや、乳首のまわりに“ただれ”があるようなときにもがんのことがあります。

乳房や乳首の左右差や変形

乳房のひふの“ひきつれ”や“へこみ”、乳首が陥没してきたような場合にも要注意です。

わきの下のしこり

わきの下のリンパ節に転移すると“しこり”としてふれることがあります。しかし他の原因ではれることもたくさんあります。

※乳癌を早期発見するために自己検診を行いましょう

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自己検診の方法

乳房全体を見る

鏡に向かって外見を観察します。

<観察のポイント>
・乳房の形に左右差はありませんか?
・乳房にえくぼのようなくぼみやひきつれはありませんか?

乳首を観察する

乳首の外見を観察し、乳首をつまむようにして分泌物が出ないか調べます。

<観察のポイント>
・乳首から血液やうみのようなしるが出ませんか?
・乳首が陥没していませんか?
・乳首にただれやかさぶたにようなものはありませんか?

さわってみる

指のはらで乳房をさわって、しこりがないか調べます。

<触診のコツ>
・指でつまむのではなく、指のはらをかるくすべらせるようにしてさわ
ります。
・入浴時に石けんをつけてさわると、わかりやすくなります。

※乳房のなかでも乳がんのできやすい部位は、乳房の外側の上部4分1の部で、ほぼ半分がこの部にできます。

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乳がんの検査

1)触診

2)超音波(エコー)

3)レントゲン(マンモグラフィー)

4)針吸引細胞診、針生検組織診

外来で診察の時、比較的簡単な1)2)3)の検査をします。これらによって80~90%以上は診断がつきますが、診断を確実にするためには、細い針を刺して細胞(組織)の一部をとって顕微鏡検査をします。

5)手術的生検

6)その他

針吸引細胞診、針生検組織診でどうしても診断がつかないときに、外来で手術的にしこりをとりだして顕微鏡検査をします。これは100%診断がつきます。また、手術の準備をして直前にこの生検をおこないその場で顕微鏡検査をして、がんの診断がつけばそのままがんの手術に移行する方法もあります。

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乳がんの進行状態

がんの進みぐあいがどの程度かということを「病期(ステージ)」といいます。しこりの大きさとわきの下のリンパ節への転移の程度によって、つぎのように分類します。

0期

きわめて早期の乳がん

Ⅰ期

しこりの大きさが2cm以下で、かつ、わきの下のリンパ節に転移していないもの

Ⅱ期

しこりの大きさが2.1~5cmのもの、または、わきの下 のリンパ節に転移のあるもの

Ⅲ期

しこりの大きさが5.1cm以上のもの、または、わきの下のリンパ節転移が著しいもの、または、しこりが皮膚や筋肉に広がっているもの

Ⅳ期

肺、骨、肝、脳などの他の臓器に転移があるもの

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乳がんの治療

手術療法

手術方法は大きく分けて、つぎの2つの方法があります。

乳房切除術

乳房全部とわきの下のリンパ節を切除します。
ほとんどは胸の筋肉を残しますが、場合により胸の筋肉をと
ることもあります。

乳房温存手術

 しこりをつつむようにして乳腺の約1/4を切除し、あわせて、わきの下のリンパ節も切除します。もちろん乳首はのこします。この方法は乳房がのこるという大きなメリットがありますが、残っている乳房にまたしこりができる(再発)という可能性もあり、やや根治度(安全性)に
欠けるという点があります。
 また、小さな癌が残っているかもしれないことを考慮して、それらを死滅させる為に、手術の後に25回の放射線治療が必要です。従って、比較的早期の乳がんの人に対しておこなわれる方法で、我々はつぎのように適応基準を決めています。

≪乳房温存手術の適応基準≫
(1) しこりの大きさが3cm以下のもの
(2) しこりが乳首の下や近くにないもの
(3) わきの下に明らかなリンパ節転移がないと思われるもの
(4) レントゲン検査や超音波検査でがんの根が広がっていないもの
(5) 何より大切なことは、患者さんが十分な説明を受けたあとに、納得をしてこの手術方法を希望されるということです。 

放射線療法

ホルモン療法

化学療法(抗がん剤)

 

 乳がんは胃がんや大腸がんに比べて放射線療法、ホルモン療法、化学療法の治療法が良く効きます。不幸にして再発した場合や、進んだ乳がんの手術の前にもこれらの治療をおこないます。

 

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当センターの乳腺治療

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最終更新日:2018/08/16