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子宮体部がん(子宮内膜癌)
子宮体部がん(子宮内膜がん)
子宮がんは子宮頸部がんと子宮体部がんに分けられます。わが国では、子宮体部がんの発生する割合は少ないと言われていました(子宮頸部がんの約5%)。しかし最近増加傾向にあり、子宮がん全体の3割を占めるようになりました。子宮体部がんは疫学的に、欧米型の食生活をする地域に多いと言われています。最近の子宮体部がんの増加は、食事が欧米型に変わってきたことが理由の1つとと言われます。子宮体部がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜から発生します。子宮筋肉に発生する子宮肉腫とは異なります。
症状
月経と無関係の出血、おりもの、排尿痛または排尿困難、性交時痛、骨盤部の疼痛を認めたならば、産婦人科医の診察を受けましょう。最も認められるものは出血です。特に、閉経後に少量ずつ長く続く出血がある時は、早めに産婦人科を受診し、子宮体部がんの検査を受ける必要があります。他の癌と同様、子宮体部がんも初期ほど治療成績がよいので、早期発見(診断)が重要です。子宮体部がんは、肥満、糖尿病、高血圧の女性に多いことも知られております。子宮体部がんは、タモキシフェンというホルモン剤の投与を受けている乳癌の方に見つかることが時々あります。このホルモン剤を服用するのであれば、子宮体部がんの検査を定期的に受けることが大切です。更に乳がんや大腸がんの方には、子宮体部がんの発生する割合が少し高いことが知られていますのでこのような方も定期的に産婦人科の検査を受けられたほうが良いでしょう。
診断
内診(腟内に手指を挿入し、子宮を診察)し、子宮の形状や大きさを調べ、それから細胞採取のために綿棒などを使って、子宮頸部の外側と腟をこすり、細胞診をします。しかし子宮体部がんは子宮の内側より発生するので、普通の頸部がんの細胞診で癌は見つけられません。子宮内膜の異常を検査するためには、頸管拡張と掻爬(そうは:子宮内膜を含め、子宮内腔内の異常組織を掻き出す)あるいはキュレットという金属性の細い棒の先に小さな爪のある器具を奥に入れて組織の一部を採取します。少し痛みがありますし、検査後、数日少量出血することがありますが検査によるものですので心配はありません。採取された組織は癌細胞の有無などを調べるために組織診断に提出されます。
予後と治療選択
治療の選択は病期(癌が子宮内膜に限局しているかどうか、子宮頸部や子宮外に拡がっているかどうか)と全身状態によります。予後は、癌浸潤(しんじゅん:癌が子宮壁に食い込んでいくこと)の深さ、リンパ節転移の有無、顕微鏡下のがん細胞の組織分化度を加えて推測されます。早期癌で子宮を残す治療を希望する時は、早期癌であることに加え、癌の成長を女性ホルモン(プロゲステロン)が抑制する時に、検討されます。治療法の選択基準としては、病期が最も大きな要素となります。
病期(ステージ)
子宮体部がんが内膜から他の部位へどれほど拡がっているかどうかを調べるために超音波検査やCT、MRIによる画像検査によって癌進行程度を診断します。子宮体部がんの病期分類は子宮頸部がんと異なり、手術治療後の病理検査結果に基づいて決定されます。
0期
子宮内膜の異型増殖状態(正常細胞と顔つきが異なる異型細胞が増えている状態)を認めるもの。
Ⅰ期
子宮体部にのみ癌が認められるもの(子宮頸部、その他には認められない)。
Ⅰa期
子宮内膜にのみ認められるもの。
Ⅰb期
子宮筋層への浸潤が筋層の1/2以内のもの。
Ⅰc期
子宮筋層への浸潤が筋層の1/2を越えるもの。
Ⅱ期
子宮体部を越えて子宮頸部に拡がったもの(がんは子宮の外に出ていない)。
Ⅱa期
頸管内の浸潤が粘膜内に限局するもの。
Ⅱb期
頸管内の浸潤は粘膜を越えて深く浸潤しているもの。
Ⅲ期
癌が子宮外に拡がっているが、骨盤を越えて外には拡がっていない、または骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの。
Ⅲa期
癌が子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣卵管に転移しているもの、あるいは腹水の中にがん細胞の認められるもの。
Ⅲb期
腟壁に転移を認めるもの。
Ⅲc期
骨盤内、あるいは大動脈周囲リンパ節に転移(+)、もしくは、基靭帯に浸潤を認めるもの。
Ⅳ期
癌が骨盤を越え、他の部位へ拡がるか、膀胱、あるいは腸の内腔を侵すもの。
Ⅳa期
膀胱あるいは腸の粘膜まで癌の浸潤を認めるもの。
Ⅳb期
盤を越えた遠隔臓器転移を認めるもの、腹腔内や鼠径部のリンパ節に転移を認めるもの。
治療
外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法の4つの治療方法があります。病気の拡がりに応じ、組み合わせます。
外科療法
手術で癌を切除し、癌の拡がりを正確に診断、化学療法などの追加の必要性を判断します。病期により術式の選択がされます。術式の違いは、切除範囲の違いで、癌が進行すれば切除範囲を広げます。しかし、切除範囲を広げると手術による障害も起こりますので総合的に考え、適切な術式を選択します。子宮体がんでは1期であっても5%ぐらいの割合で卵巣転移があるとされますので、卵巣摘出も同時に行います。
単純子宮全摘出術と両側付属器(卵巣と卵管)切除術
子宮、卵巣、卵管を切除します。術前診断で、0期の場合には標準的にはこの手術が行われます。手術前診断でⅠ期以上の場合、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を追加する場合があります。
準広汎子宮全摘出術/広汎性子宮全摘術
子宮、卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めて広汎に切除します。この術式は、術前の診断で癌が子宮頸部におよんでいる場合(Ⅱ期、およびⅢ期の一部)などに選択されます。
腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合もあります。
化学療法
化学療法は癌細胞を殺す抗癌剤を使用します。内服あるいは経静脈的に投与します。別名全身的治療とも呼ばれ、薬剤が血流に入って全身をめぐり、子宮外の癌細胞を殺すからです。化学療法を単独で行うのは、病気がすでに全身に広がっている場合(Ⅳ期の一部)などがあります。手術後に化学療法を行うのは、病気が子宮外に拡がっている場合など(Ⅲ/Ⅳ期)です。
ホルモン療法
ホルモン療法は、癌細胞の発育を抑えるために女性ホルモン剤を使用します。黄体ホルモンの働きのある経口内服剤を用いられます。手術前診断で、0期もしくはⅠ期で、子宮どうしても残したいと希望する若年の女性の場合に選択されることがあります。その場合、癌病巣を含む子宮内膜をすべて掻爬する治療と組み合わせます。また、再発の危険性の高い症例の補助的治療として、あるいは化学療法の効果が不十分な場合や全身状態不良で化学療法が不可能な場合に、化学療法に代わり全身的治療として施行することもあります。
放射線療法
放射線療法は、治療用X線または高エネルギー線を用い、癌細胞を殺します。放射線治療は身体の外から行う外照射方法と、アイソトープを充填したプラスティックをがんの存在する部位に設置して行う腔内照射方法があります。放射線治療は、放射線治療を希望される場合や、高年齢あるいは他の病気のために手術の行えない場合や病気の拡がりのため手術を行うことが困難な場合(ⅢやⅣ期の一部)などに用いられます。手術後に放射線療法を行うのは、リンパ節転移を認めた場合、病変が子宮の壁に深く浸潤した場合、腟壁に浸潤した場合などがあります。
再発
治療後で癌が再び発生することです。再発は、治療後の子宮、腟、骨盤内の組織に発生する局所的再発と、肺や肝臓に転移する遠隔転移再発があります。割合はほぼ同じです。局所再発に主として放射線療法が行われますが、孤立性の遠隔転移には外科療法が行われることもあります。多臓器の再発や転移のある場合には、ホルモン療法や化学療法が行われることがあります。再発の場合には固定した治療法ではなく、部位や再発様式にあわせて個人に最適な治療を検討し対策をとりますが孤立性の肺転移あるいは腟壁再発を除けば予後は不良です。治癒させる目的ではなく、腸閉塞を解除するための外科療法や、骨転移によっておこる痛みを軽くするための放射線療法など、症状を軽くする治療(対症療法)を行う場合もあります。
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最終更新日:2018/08/16