卵巣がん

診断法(日本産婦人科学会婦人科癌取り扱い規約より引用)

問診

 卵巣癌は無症状のうちに進行するものが多く、また、卵巣腫瘍の種類によって好発年齢があります。

 卵巣癌の危険因子としては、未婚、未妊・未産、長期の卵巣機能異常、動物性脂肪の多量摂取、卵巣癌の家系などがあります。

内診・外診

 閉経後数年を経過しているにもかかわらず、性成熟期と同大の卵巣を触知される場合は、腫瘍の可能性を考慮しなければなりません。

画像診断

超音波断層検査

CT、MRI

その他の画像診断

胸部レントゲン、腹部レントゲン、腎盂造影、骨盤内血管造影、リンパ管造影、消化管の諸検査、腫瘍シンチグラフィ 

内視鏡(腹腔鏡)

細胞診、組織診

子宮内膜細胞診、腹水細胞診

腫瘍マーカー

CA125, CA19-9, CA72-4, AFP, hCG, LDHなど(腫瘍の組織型によって異なります)

セカンドルック手術

治療効果を判定し、その後の治療方針を決定するために再開腹して残存腫瘍の有無を可及的に検索します。

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進行期分類(国際進行期分類、FIGO 1988)

Ⅰ期

卵巣内限局発育

Ⅰa期

 腫瘍が一側の卵巣に限局し、癌性腹水が無く、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの

Ⅰb期

腫瘍が両側の卵巣に限局し、癌性腹水が無く、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの

Ⅰc期

腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが、被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの

Ⅱ期

腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤内への進展を認めるもの

Ⅱa期

進展ならびに/あるいは転移が、子宮ならびに/あるいは卵管に及ぶもの

Ⅱb期

 他の骨盤内臓器に進展するもの

Ⅱc期

 腫瘍発育がⅡaまたはⅡbで被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの

Ⅲ期

腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜または、鼠径部のリンパ節転移を認めるもの。また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや、肝表面への転移の認められるものもⅢ期とする

Ⅲa期

リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの

Ⅲb期

リンパ節転移陰性で、組織学的に確認された直径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの

Ⅲc期

 直径2cmをこえる腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移の認められるもの

Ⅳ期

腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、遠隔転移を伴うもの

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治療法

手術療法 

初回手術の目的は腫瘍の広がりを診断し、原発ならびに転移巣を可及的に摘出することにあります。術式の選択は進行期、組織型、組織学的悪性度など予後を左右する諸因子と、年齢、挙児希望、合併症など総合的に判断して行われます。

根治手術

 標準術式は正中切開による子宮全摘術および両側付属器摘出術、大網切除術です。さらに必要に応じて骨盤から腹部にかけてのリンパ節郭清術が行われます。転移巣があれば転移巣切除術、さらに内性器とともに膀胱、直腸など骨盤内臓器を摘出する骨盤除臓も行われます。

保存手術

 妊よう性を温存する手術で、通常片側付属器摘出術が行われます。卵巣がんは早期であっても再発リスクが高いため、保存手術の適応については慎重さが要求されます。

試験回復術

 進行癌で後療法の効果を期待し、診断のための生検のみにとどめ閉腹する術式です。合併症が早急に予想される症例では、生命予後との兼ね合いで人工肛門造設術、尿路変更術などが同時に行われます。

セカンドルック手術

 初回手術完全摘出症例の化学療法打ち切りの判定を目的にした、臨床的に自他覚症状のまったくないものに対する再開腹手術です。最近ではCT, MRI等の画像診断に置き換わり、行われなくなりました。

第2次腫瘍縮小手術

 初回手術不完全摘出あるいは試験開腹症例に対する化学療法奏効症例に対し、可及的腫瘍摘出を目的とした再開腹手術です。

化学療法

進行癌が多く早期癌でもしばしば再発するのが卵巣がんの特徴であり、かつ化学療法が奏効する腫瘍の一つであるので、多くの症例が化学療法の対象になります。

放射線療法

卵巣がんの放射線療法は、放射線感受性がきわめて高い未分化胚細胞腫を除いて比較的低感受性であり、癌細胞の広がる可能性のある腹腔全体を治療するために、消化管、肝、腎を照射域に含むため十分な線量を照射できないなどの制約があります。

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最終更新日:2018/08/16