胆嚢(たんのう)がん

胆嚢がんについて

 肝臓から分泌された胆汁が十二指腸に流れ出るまでの経路を胆道といい、胆嚢管という細いらせん状の管を介して、胆汁を一時的に貯留しておく袋状の部分が胆嚢です。胆嚢および胆嚢管にできるがんを胆嚢がんといいます。わが国では60歳代に最も多く、男女比は1:2から1:3と女性に多いがんです。

 超音波検査の普及で、胆嚢に腫瘍が発見される機会が増加しました。胆嚢の腫瘍には悪性腫瘍である胆嚢がん以外に腺腫や各種のポリープなどの良性腫瘍が数多くみられます。したがって、胆嚢腫瘍をただちに胆嚢がんと考える必要はありませんが、専門医による確実な診断を受けることが大切です。

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症状

 胆嚢がんの初期では、併存する胆石症や胆嚢炎による腹痛や発熱などの症状が出現することはあっても、がん自体による特徴的な症状はありません。しかし、胆嚢がんが進行して、他の臓器(総胆管、十二指腸、肝臓など)に進展すると、その程度により種々の症状が出てきます。

以下に代表的な症状を挙げます。

腹痛

 最もよくみられる症状で、上腹部や右の肋骨の下に鈍痛が出現します。胆石が合併していれば、繰り返しおこる強い痛みや右の背中へ広がる痛みがおこることがあります。

黄疸

 次によくみられる症状で、がんが進行し胆汁の通路である胆道を閉塞すると出現するものです。通常は進行がんにみられる症状です。

腹部腫瘤(しゅりゅう)

 右の肋骨の下に腫瘤として胆嚢を触れることがあります。黄疸がある場合は、腫大した肝臓の一部を触れたりします。

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診断

 40歳を過ぎたら、年に1回は人間ドックなどの定期検診を受けて下さい。通常は胆嚢の超音波検査が行われますので、無症状の胆嚢がんが発見されることがあります。他のがんと同様ですが、最も大切なことは早期発見です。胆石症がある場合は、無症状でも定期的なチェックや治療が必要です。

 各種の画像検査のなかでは、超音波検査は苦痛が少なく反復して行えるので、胆嚢疾患のスクリーニングとして最適です。この検査により、最近では小さながんや早期のがんが数多く発見できるようになりました。超音波検査で胆嚢がよく見えない時や胆嚢に何らかの異常が疑われれば、次の検査としてCTやMRIが行われます。これにより、胆嚢がんの確認およびがんの周囲への進行状況や、他の臓器への転移の有無などが確認されます。

 次に、内視鏡を用いて十二指腸への胆道の出口から細い管を胆管に挿入して、直接胆道を造影する内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)と呼ばれる検査があります。さらに、手術を予定している場合には血管造影が行われ、胆嚢がんの肝動脈や門脈への拡がりの有無を調べます。 

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治療

 胆嚢がんの治療法には、外科療法、抗がん剤による化学療法、放射線療法などがあります。このうちで最も根治的な治療法は手術ですが、他の消化器系のがんに比べると手術できるケースが少ないのが現状です。

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胆嚢がんの外科治療について

胆嚢は壁が薄いため、胆嚢癌は壁外へも進展しやすく、肝臓に付着しているため、肝臓内に直接浸潤を起こしやすいため、診断時に切除不能と判断されることもままあります。

癌の浸潤が胆嚢粘膜・筋層までに留まっている場合

リンパ節転移を起こしていることはほとんどなく、胆嚢を全層切除すれば、治療は十分です。胆石や胆嚢ポリープの手術として腹腔鏡手術がありますが、手術後の胆嚢の病理組織検査で偶然胆嚢癌が発見されることがあります。癌の浸潤が筋層までに留まっている場合には、治療は十分と言えます。

癌の浸潤がそれ以上(漿膜下層以上)に進んでいる場合

胆嚢の付着している部分の肝切除と肝門部のリンパ節郭清を行います。肝門部のリンパ節郭清を確実に行う必要がある場合には胆管も切除し小腸で再建をすることもあります。

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最終更新日:2018/08/16