肝臓がん

肝がんについて

 肝臓がんには原発性肝癌(肝臓から発癌)と転移性肝癌(=他臓器からの転移/大腸癌の肝転移など)があります。原発性肝癌の約90%が肝細胞癌(以下肝がん)で、その特徴として約60%にC型肝炎ウィルス、約15%にB型肝炎ウィルス感染が背景にあります。肝がんの死亡者数は2000年代前半を最多に以後は減少しつつありますが、いまだ年間3万人以上の方が死亡されています。C型慢性肝炎および肝硬変(肝線維化進展)は肝がん発生の高危険群であり、その他高齢・男性・肝脂肪化・高血糖などが危険因子です。C型肝炎では、病態が進行するほど肝がんの発生頻度が高く、軽度の慢性肝炎(組織学的分類でF1)では10年間での推定発がん率が5%であるのに対し、肝硬変(F4)では70%という報告があります。近年では非アルコール性脂肪肝炎を背景とした肝臓がんが増加してきています。生活習慣病である、糖尿病、脂肪肝、高脂血症の発見、治療が重要です。

肝がんの特徴

  肝がんの特徴として、①肝線維化進展に伴い発癌率が高くなること、②腫瘍サイズが増大するにつれて分化度が低下し、悪性度が増すこと、③分化度により腫瘍の血流状態が変化すること、④肝予備能(肝臓の余力)により治療方法が限定されること、⑤根治的治療後の再発率が年約15~20%と高率であること(多中心性発癌や肝内転移による)、などが挙げられます。

肝がんの治療

  肝臓がんの治療法は肝予備能(Child-Pugh分類と肝障害度、近年ではアルブミンとビリルビンから算出するALBI gradeを用いる)や癌の進行度(Stage)により選択されます。治療方法は外科的治療として肝切除術(系統的切除・部分切除)、肝予備能不良では肝移植術があり、内科的治療として局所穿刺療法(RFA:ラジオ波焼灼療法、MCT:マイクロ波凝固療法、PEI:エタノール局注療法)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注化学療法、放射線治療、薬物療法、緩和治療があります。
 
 肝がんの程度、背景肝疾患の程度により、外科チームと治療方針を検討しています。
 日本ではサーベイランスが浸透しているため、約60%で切除やRFAの根治治療がおこなわれ、約30%においてTACEが行われています。
 第19回全国原発性肝癌追跡調査報告(日本肝癌研究会)での5年生存率は、全体で44.3%、主たる初回治療別に、肝切除56.8%、局所治療47.0%、TACE25.7%でした。背景肝の肝予備能、ステージ、さらには他疾患の状態などにより各種治療方法を組み合わせた集学的な治療が必要になります。
 ”治療後”も再発の早期診断が重要であり、厳重な経過観察が必要です。前述の定期的な腫瘍マーカーの測定、肝画像検査を行うことが重要です。また背景の肝疾患の治療(抗ウィルス療法、禁酒、栄養管理、糖尿病治療など)や肝庇護療法による肝線維化の進展を抑制することで、肝予備能の低下を
防ぎ、肝癌の再発を予防することが重要です。
 かんが肝がんの治療はTACEE不応切除不能肝がんでは、薬物療法として2009年に分子標的薬ソラフェニブが保険適用され、予後の延長が得られるようになっており、2019年末でレゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブが承認されています。近年では反復したTACEによる肝予備能低下を来す前に、薬物療法で進行を抑えることが重要視されています。放射線治療では体幹部低位放射線治療や粒子線治療などが行われ、局所治療として確立されてきています。
 

定期的な通院と合併症治療

  肝がんは再発が多いため、根治治療後も再発の早期診断のため、スクリーニングと同様にフォローします。高齢者が多いため、他科疾患合併症も多く、他科と診療連携も重要です。背景肝疾患の原因治療のみならず、肝予備能を保つための各種薬剤療法や栄養療法、運動療法、また肝硬変の合併症治療(食道静脈瘤予防的治療や肝性脳症治療など)も重要で、各種のマネージメントと集学的治療が必要です。

 

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最終更新日:2020/08/12