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肝臓がん(内科部門)
肝臓がんについて
肝臓がんには原発性肝癌(肝臓から発癌)と転移性肝癌(=他臓器からの転移/大腸癌の肝転移など)があります。原発性肝癌の約90%が肝細胞癌(以下肝がん)で、その発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しているとされています。
肝がんの死亡者数は2000年代なかごろに約3万4千人に達しましたが、その後漸減し現在2万人程度で推移しています。C型慢性肝炎および肝硬変(肝線維化進展)は肝がん発生の高危険群であり、その他高齢・男性・肝脂肪化・高血糖などが危険因子です。C型肝炎では、病態が進行するほど肝がんの発生頻度が高く、軽度の慢性肝炎(組織学的分類でF1)では10年間での推定発がん率が5%であるのに対し、肝硬変(F4)では70%という報告があります。近年では非アルコール性脂肪肝炎を背景とした肝臓がんが増加してきています。生活習慣病である、糖尿病、脂肪肝、高脂血症の発見、治療が重要です。
肝がんの特徴
肝がんの特徴として、
①肝線維化進展に伴い発癌率が高くなること
②腫瘍サイズが増大するにつれて分化度が低下し、悪性度が増すこと
③分化度により腫瘍の血流状態が変化すること
④肝予備能(肝臓の余力)により治療方法が限定されること
⑤根治的治療後の再発率が年約15~20%と高率であること(多中心性発癌や肝内転移による)
などが挙げられます。
検査について
肝臓がんの検査は以下の通りです。
肝がんの治療
肝がんの治療法は肝予備能(Child-Pugh分類やmALBI gradeなど)や癌の進行度(Stage)により選択されます。
治療方法は外科的治療として肝切除術(系統的切除・部分切除)、肝予備能不良では肝移植術があり、内科的治療として局所穿刺療法(RFA:ラジオ波焼灼療法、MCT:マイクロ波凝固療法、PEI:エタノール局注療法)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注化学療法、放射線治療、薬物療法、緩和治療などがあります。
近年、特に切除不能進行肝細胞癌に対する薬物療法の開発は目覚ましく、2024年6月現在で8種類のレジメンが実臨床において使用可能となっています。同時に、複数の治療を組み合わせ、集学的な治療を行うことで治療効果を上げる工夫も行われています。
各種治療法の特性を深く理解し、背景肝の肝予備能、腫瘍の進行度、さらには他疾患の状態などを考慮して、症例に応じて最適な治療方針を計画することが必要です。治療後も再発の早期診断が重要であり、厳重な経過観察が必要です。前述の腫瘍マーカーの測定や肝画像検査を定期的に行うことが重要です。
また背景の肝疾患の治療(抗ウイルス療法、禁酒、栄養管理、糖尿病治療など)や肝庇護療法による肝線維化の進展を抑制することで、肝予備能の低下を防ぎ、肝癌の再発を予防することが重要です。
定期的な通院と合併症治療
肝がんは再発が多いため、根治治療後も再発の早期診断のため、スクリーニングと同様にフォローします。高齢者が多いため、他科疾患合併症も多く、他科と診療連携も重要です。背景肝疾患の原因治療のみならず、肝予備能を保つための各種薬剤療法や栄養療法、運動療法、また肝硬変の合併症治療(食道静脈瘤予防的治療や肝性脳症治療など)も重要で、各種のマネージメントと集学的治療が必要です。
最終更新日:2024/08/23