膵がん

膵がんについて

 膵臓から発生した癌のことを一般に膵がんと呼びます。膵臓は胃の後ろにある長さ20cmほどの細長い臓器で、右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接しています。膵臓にできる癌のうち90%以上は外分泌に関係した細胞、特に膵液を運ぶ膵管の細胞から発生します。これを特に膵管がんといいます。普通、膵がんといえばこの膵管がんのことをさします。

 わが国では、毎年18,000人以上の方が膵がんで亡くなっています。しかし、残念なことに、その診断と治療はいまだに難しいことが知られています。膵臓は身体のまん中にあり、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれているため、癌が発生しても見つけるのが非常に難しいのです。また、早い段階では特徴的な症状もありません。このような理由で、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つかるということはほとんどありません。膵がんとわかった時にはすでに手遅れということが多いのです。早期発見はどのような治療よりも治癒率の向上に貢献しますので、どうしたら早く発見できるかという研究が意欲的に続けられています。

 膵がん、特に早期の膵がんに特徴的な症状はあまりありません。膵がんの方が病院へ来られた理由を調べてみますと、最も多いのは胃のあたりや背中が重苦しいとか、なんとなくお腹の調子がよくないとか、食欲がないなどという漠然としたものです。この他に、体重の減少などもよくおこります。このような症状は膵がんでなくてもいろいろな理由でおこるものです。比較的膵がんに関連のあるものとして、身体や白目が黄色くなる黄疸があります。この時は、身体がかゆくなったり、尿の色が濃くなったりもします。黄疸は、膵臓の頭部にがんができて、胆管がつまってしまった時におこるのですが、胆石や肝炎などが原因の時もあります。

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診断

 漠然とした消化器症状の方に対しては、まず超音波検査や内視鏡・胃のレントゲン検査などを行って、胃炎・胃潰瘍・胆石などの一般的な消化器の病気がないかどうか調べます。超音波検査では膵臓の観察もできますので、異常があれば次の検査に進みます。

 また、超音波では異常がはっきりしない場合でも、症状や血液検査のデータで、膵臓や胆管などに病気のある可能性がある場合には、X線CTやMRI(など超音波以外の方法で身体の断面を観察することのできる検査を行います。

 また、ERCPという検査を行う場合もあります。この検査は、胃カメラのような内視鏡を十二指腸まで運び、前に述べた十二指腸乳頭という膵管と胆管の出口に細い管を差し込み、造影剤を注入して膵管や胆管の形を調べるものです。さらに、必要があれば血管造影を行います。これは、足のつけ根の動脈から細い管を差し込んで、膵臓やその周辺に向かう動脈に造影剤を流し、血管の構造や病気による変化を調べるものです。

黄疸のある場合には、まず超音波検査で胆管がつまっているかどうかを確認します。胆管がつまって太くなっている場合(閉塞性黄疸)には、超音波で観察しながら肝臓の中の胆管に針を刺し、これを利用して細い管を胆管の中に入れます。この管から造影剤を注入すると胆管がどこでつまっているかわかります。これをPTCといいます。また、この管から胆汁を外に流し出すことにより黄疸を治療することができます。

PTCDを行っても黄疸が消失するまでには時間がかかりますので、その間に前に述べたような検査を行って診断を進めていきます。

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治療

 癌の治療には主なものとして外科療法・放射線療法・化学療法(抗がん剤)の3つがあります。腫瘍の進行程度と全身状態などを考慮して、このうちのひとつ、あるいはこれらを組み合わせた治療が行われます。

 どのような治療を行うかは、癌の進行度と全身状態によって決定されます。 癌が膵臓あるいはその近辺に限局している場合は、切除手術あるいは手術を中心とした集学的治療を行います。癌の範囲は限局しているけれども切除できない理由がある場合には、放射線療法や放射線療法と化学療法の組み合わせなどが行われます。これらにバイパス手術を組み合わせることもあります。癌が広い範囲にある場合には抗がん剤による治療を行います。

 いずれの場合も全身状態があまりよくないため、癌に対する治療の負担が大きすぎると考えられる場合には、別の治療を行ったり、痛みのコントロールや栄養の管理など対症的な治療のみに止める場合もあります。

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膵がんの外科治療について

 膵がんは消化器癌の中で最も治りにくい癌の1つです。手術の治療成績も満足できるものではありませんが、現在でも長期生存・治癒が期待できる唯一の治療法は外科治療(手術)です。

治療法の選択は、Stageよって決定していきます。すなわち、Stage IからIIIおよび一部のIVaでは手術療法が第一選択となり、多くのStage IVaでは化学療法あるいは化学放射線療法が、Stage IVbでは患者さんの体力に応じて化学療法を選択しますが、病状が随分進行し体力的に化学療法に耐えられない場合は、症状などの緩和を中心としたbest supportive care (BSC)を選択するかを判断します

手術は組織学的に癌遺残のない根治手術(R0手術)を目的として、膵頭部にがんがあれば、膵頭十二指腸切除術、膵体尾部にがんがあれば、膵体尾脾切除術をリンパ節郭清と共に行います。

最近では手術に加えて術後補助化学療法として、TS-1、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)の有効性が証明されており、術後に積極的にお勧めしています。TS-1は内服薬で4週内服2週休薬を6ヶ月間継続します。ジェムザールの場合は点滴治療を週1回(3週投与1週休薬)3ヶ月~6ヶ月間続けます。いずれも治療は外来通院で十分可能です。

また、術前のCTなどの画像診断にてT4(がんの浸潤が門脈や主要動脈に認められるもの)の疑わしいようなケースに対しては術前治療として、TS-1+放射線治療による治療を当院と岐阜大学医学部附属病院・岐阜市民病院との3病院共同の臨床試験をお勧めしております。

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膵頭十二指腸切除術について

膵頭部がんをはじめとして、中下部の胆管がん・十二指腸乳頭部がんなどの患者様に対して膵臓の頭部と十二指腸を一括して切除する手術法です。切除した後に、膵臓・胆管・消化管を再建しなくてはならず、5~6時間はかかる消化器外科の中では大きな手術の1つであります。

再建方法は膵臓・胆管・消化管のつなぐ順番、膵臓を小腸とつなぐか胃とつなぐか、胃を切除するか否かなどにより、図1のごとく様々な方法があり、どの方法が良いのかはまだ確立していない状況です。

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 当科では膵頭十二指腸切除術で問題となる膵液瘻(膵臓と小腸をつないだところから膵液がお腹の中に漏れる)と胃内容排泄遅延(大きな胃を残すことによって胃からの食物の排泄が悪くなる)という2つの合併症を軽減するために、色々な工夫をしてきました。

 現在の再建方法は図2のごとく、胃をわずかに切除する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を基本術式としております。

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 膵臓と小腸の吻合には必要に応じて膵管には「ロストステント」と呼ばれる短いチューブを留置します。このチューブは必要なくなれば、腸の中を通って肛門から排出されます。

 また、周術期の栄養状態改善のために必要に応じて小腸の中へカテーテルを1本入れて、経腸栄養(腸の中へ直接栄養剤を入れること。)を術後早期に併用しています。胆管には原則としてチューブは留置しません。胃と小腸あるいは十二指腸と小腸をつなぐのには器械吻合を用いています。さらに消化管の流れを良くするために、「ブラウン吻合」と呼ばれる小腸・小腸どうしをつなぐ吻合を追加しています。

 

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最終更新日:2018/08/16