放射線治療部

南棟での治療開始

 

        Raduixact X9(ラディザクト)                 VersaHD(バーサエイチディ)

 まず稼動を開始したのは、強度変調放射線治療に特化したRadixact X9(ラディザクト: Accuray社製)です。あらゆる部位の根治的照射に対応した装置ですが、これまでのリニアックでも対応していた前立腺癌や頭頚部癌から開始しています。その後順次適応を拡大して、根治的な治療の大部分(乳癌を除く)はRadixact X9で対応する予定です。2024年9月末までは現在の本館地下でのリニアック(Clinac21EX:Varian社製)との2台体制での運用となります。

  2台目のリニアックとなるVersaHD(バーサエイチディ:Elekta社製)は2024年10月から稼働予定であり、このタイミングで南棟での全面的な稼働となります。この装置の運用によって体表面画像誘導放射線治療(SGRT)システムであるCatalyst(カタリスト:C-Rad社)の全面的な稼働が可能となります。このシステムは乳癌の放射線治療で威力を発揮することになり、従来の照射と異なり病巣内の線量の厳密な意味での均一化、直下の肺の線量の低減化が実現できます。さらに左側の乳癌では、心臓への線量の低減のために深吸気の息止めでの照射が必須となりますが、この照射を現装置で行うよりもスピーディーにより正確に実現が可能となり、乳癌患者様の照射には大きな利益がもたらされることになります。

 南棟では治療装置のみならず、高精度の放射線治療を実現するために、放射線治療計画専用の高機能CTを導入し、治療装置に先立って2024年4月から運用を開始しています。また、放射線治療に関わるあらゆるデータを統合的に管理し,高精度放射線治療をバックアップしてくれる放射線治療部門システム(MOSAIQ-OIS:Elekta社製)を2023年1月より稼働しています。

 順次機能を更新して、2024年10月には2台のリニアックの機能を最大限に発揮できる部門システムとしての運用を準備しています。

 

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これまでの放射線治療実績

 

  2019年度   2020年度   2021年度   2022年度   2023年度  
75   71   69   58   67  
原発   3   9   3   5   5
転移   71   58   66   53   59
頭蓋底   1   0   0   0   0
PCI   0   4   2   2   3
うち定位   58   26   47   37   52
頭頸部 27   29   32   29   48  
うちIMRT   8   7   7   13   13
食道 14   8   15   9   16  
77   58   57   52   54  
うち定位   28   19   16   16   21
乳腺 81   96   98   76   59  
温存手術後   60   59   52   41   27
乳房切断後   18   35   41   29   32
消化器(除食道) 31   24   35   55   40  
うち定位   5   9   16   22   18
前立腺 55   66   51   42   62  
うちIMRT   49   55   43   38   60

泌尿器その他

15   6   12   7   14  
女性生殖器 34   50   23   37   38  
造血器 15   14   23   10   11  
皮膚・軟部組織 6   3   4   10   2  
緩和照射 155   155   113   121   93  
非密封小線源 5   1   2   2   2  
ラジウム   5   1   2   2   2
ストロンチウム   0   0   0   0   0
合計 590   581   534   508   507  

 

 コロナ感染の影響で、早期にがんの診断に至らす、十分な放射線治療が提供できない時期まだ継続しています。照射中の患者様の周囲にも感染される方がみられ、一定期間照射を中断せざるを得ない状況も時には発生しています。放射線治療業務そのものが中断しないように細心の注意を払って日々の業務に勤めています。

 装置1台の体制のために十分とは言えませんが、前立腺癌と信仰頭頸部癌には強度変調放射線治療(IMRT)を、転移を主とした脳腫瘍は体幹部では肺癌や肝細胞癌に定位放射線治療を実施しています。

 

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高精度放射線治療について

 まずは当院での実績を提示します。通常の照射の件数に大きな変化はありませんが,高精度放射線治療の件数は確実に増加しています。2024年度以降は装置の更新によりこの傾向はより顕著となります。

  2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
 定位  54 91 54 79 76 94
35 58 26 47 37 52
15 28 19 16 16 21
4 5 9 16 22 14
0 0 0 0 0 1
その他 0 0 0 0 1 2
 IMRT  59 65 62 50 51 90
頭頚部 7 8 7 7 13 27
前立腺 52 57 55 43 38 60
0 0 0 0 0 1
0 0 0 0 0 2

  

定位放射線治療

 がん病巣に多方向から放射線を照射することで,病巣に高線量を集中して効率的な抗腫瘍効果を得ることを意図した照射方法で、頭部の病変では1mmの精度で、体幹部の病変では5mm以内の精度を保っての治療となります。

【脳腫瘍の場合】 【肺癌の場合】

 

    

                                 


 

 

強度変調放射線治療

 最新のコンピュータ技術を駆使した治療法で,専用コンピュータによる最適化計算により、照射装置から放射線が出る部分の形状を特殊な方法で段階的に変化させながら照射する治療方法。この技術により、腫瘍への投与線量の増加と同時に近接する正常組織の線量低減が可能となりました。現在は1台体制のため、すべての根治的放射線治療に行うことはできませんが、2024年度以降は全面的に強度変調放射線治療が実施できる体制が構築できます。当初は段階的に適応拡大を行いますが、本年度中には全面的な運用を目指します。

【前立腺癌の場合】 【下咽頭癌の場合】
                                        

 前立腺癌では治療対象となる前立腺に高線量を照射するとともに、近接する膀胱や直腸への線量の低減を実現します。下咽頭癌等の進行頭頸部癌では原発病巣やリンパ節転移に高線量を照射し、将来的に転移を起こす可能性のあるリンパ節領域には転移を予防できるだけの線量を照射し、さらに耳下腺への線量を低減して唾液の分泌を維持することを実現します。

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高次元放射線治療の整備状況(事業の進捗に合わせて,順次更新します)

 ① 2021年12月  南棟建設開始

 ② 2022年秋    南棟に整備される2台の機器の選定完了

 ③ 2023年4月   放射線治療部発足

 ④ 2024年5月7日   南棟での放射線治療業務の開始
              ・ RadixactX9(Accuray社製)の運用開始
              ・ 放射線治療計画用CT(SOMATOM X.cite:Siemens社製)運用開始
              ・ 旧リニアック(Clinac21EX)は継続して運用

 ⑤ 2024年10月1日   南棟での放射線治療業務が全面稼働
              ・ VersaHDの運用開始
              ・ Catalyst+HD運用開始(体表の輪郭での位置合わせ)
              ・ 旧リニアック(Clinac21EX)の運用終了

 ⑥ CyberKnife S7の運用開始時期は未定(2025年4月の運用を目指す)

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南棟で整備する放射線治療システムについて

高精度照射にも対応可能な汎用型リニアック
  VersaHD(Elekta社製)の導入が決定し、2023年10月1日運用開始


● 本装置には可視光によるポジショニング、リアルタイムモニタリング、呼吸管理を実現するCatalyst+HD(C-RAD社)を附属システムとして導入します。
● 放射線治療計画用CT室にはCT画像の取得に合わせて体表画像も取得するSentinel(C-RAD社)を合わせて導入します。
● 本装置でもかなりのレベルまでの強度変調放射線治療や定位放射線治療も実現可能であり、RadixactやCyberKnifeの機能を補完することも可能です。

【Catalyst+HDについて】

 

 体表の呼吸等による動きをリアルタイムでモニターして,装置の安全な自動制御を実現するシステムです。従来必須であった皮膚表面のマークも不要となり、照射部位の皮膚のケアにも気を使う必要がなくなります。皮膚マークが不要になることで、皮膚マークの消失を心配する必要がなくなり高精度の放射線治療を計画するために時間が十分に確保でき、信頼度の高い高精度照射の実現が保障されます。

 また、胸腹部で高精度の照射を行うためには息止めでの照射が必要でしたが、本システムの運用で体表の動きで呼吸状態をモニターすることが可能になり息止めの難しい高齢の患者様でも高精度の照射が実現可能となります。最終的には着衣をつけたままでの照射の実現も考えています。

 

強度変調放射線治療に特化したリニアック
  RadixactX9の導入が正式に決定し、2023年5月7日より運用を開始しています。

 
強度変調放射線治療に特化したトモセラピーの進化バージョンで、新しく以下の機能が具備されてより高い精度の治療が実現できます。 

【新しく追加される機能】

 ● カウチキャッチャーによる治療寝台撓みの回避

 ● 動態追尾機能であるSynchorny:治療中の腫瘍の動きを追従し、修正する機能
      従来のトモセラピーの弱点で合った胸部や腹部の腫瘍にも正確で、高精度の放射線治療が実現

 ● ヘリカルkVCTイメージングClearRT
     従来のMVCTに比し明瞭な画像で正確な位置合わせが実現
     日々の照射による体の輪郭や腫瘍の形状の変化が明瞭に確認できる
     日々の変化を治療計画に取り入れる適応放射線治療を目指す上での第一歩となる

 ● 体表面画像誘導放射線治療システム VitalHold
     VersaHDにも搭載しているCatalyst+HDをRadixactの特性に合わせてカスタマイズされたシステム

  •  

体幹部も含めた定位放射線治療に特化したリニアック
  CyberKnife S7の導入が決定し、2025年4月には全面稼動の予定

   

● 県内初号機となるロボットアーム式リニアック
● 頭蓋内腫瘍のみならず、体幹部や四肢の腫瘍でのピンポイントの照射が実現
● 動態追尾機能Synchorny:治療中の腫瘍の動きを追従し、修正する機能

放射線治療計画専用CTシステム
  SOMATOM X.citeは新たな治療装置の運用に先立って、2024年4月より稼働を開始

 
Siemens社製のシングル管球CTのフラグシップモデルだが、放射線治療計画の基準に合致した専用寝台を具備するカスタマイズされた装置となる


金属アーチファクトの低減(iMAR)による治療計画性の向上


 ● Dual Energy Imagingの手法も使い、低Energy造影画像により腫瘍の描出能の向上した画像を取得
 ●この画像を放射線治療計画に直結するDirectDensityの技術
 ●さらには正常臓器の輪郭を自動抽出するシステム

 従来の放射線治療計画CTにはなかった多くの技術を駆使して,高精度のCT画像を取得し高精度の放射線治療に結びつけます。
 放射線治療計画に使うCT画像が不十分なものでは、どれだけ治療装置が高精度のものであっても真に精度の高い放射線治療は実現されません。このコンセプトは岐阜大学放射線科と共有し、システムの構築を進めています。

放射線治療計画システムRayStation
  2022年秋RayStationの導入が決定し、2024年4月から運用開始

● 3台のリニアック全ての治療計画に対応したシステム
● 放射線治療計画のためのあらゆる機能を装備
● 適応再治療計画モジュールによりオンライン再計画を実現

【適応放射線治療とは】
 治療の進行による腫瘍の縮小や体格の変化を可能な限りリアルタイムで修正を行って治療
 精度の維持を図る,ある意味究極の高精度放射線治療となります。

放射線治療部門システム
  MOSAIQ-OIS(Elekta社製)は日々の放射線治療の管理、医事請求を行うためのシステムに留まらず、治療装置の情報や画像情報も含めた放射線治療に関する情報を統括的に管理するシステムになります。2023年1月の電子カルテシステムの更新に合わせて導入しました。

● 放射線治療患者のデータベースを構築
● 放射線治療計画の進捗管理
● 日々の照射情報の管理
● 日々の患者の状態の管理
● 各装置の品質管理
● 放射線治療計画情報(DICOM-RT)の管理
● IGRT画像(2D,CBCT,ClearRT)の管理・表示
   →適応放射線治療の運用のためのキーとなる役割を担う
● 各職種に特化した画面構成で業務の効率化,高機能化を展開
● 必要なデータは電子カルテ側からの参照可能な環境を構築

 

今後機器の選定作業や各種準備の進捗に合わせて順次更新してまいります。

(2024年5月31日更新)

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最終更新日:2024/06/07