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がんについての基本的な情報

子宮体部がん(子宮内膜癌)

子宮体部がん(子宮内膜がん)とは

子宮体部がんは近年増加し、浸潤性子宮癌の6割を占めています。子宮内膜がんとも呼ばれるように胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜から発生します。子宮筋肉に発生する子宮肉腫とは異なります。子宮頸がんと異なり病因は不明ですが、一部の子宮体部がんは女性ホルモンが発生か対句に関与しています。癌の発生には様々な遺伝子が変異してきます。遺伝子異常を背景とした子宮体がんの分類がWHOから2020年に提唱されましたが(分子遺伝学的分類)、本邦ではまだ普及していません。また進行期分類も2023年にFIGO(国際産婦人科連合)から発表され、近々本邦の分類も変わる予定です。

症状

月経と無関係の出血、おりもの、排尿痛または排尿困難、性交時痛、骨盤部の疼痛を認めたならば、産婦人科医の診察を受けましょう。最も認められるものは出血です。特に、閉経後に少量ずつ長く続く出血がある時は、早めに産婦人科を受診し、子宮体部がんの検査を受ける必要があります。他の癌と同様、子宮体部がんも初期ほど治療成績がよいので、早期発見(診断)が重要です。子宮体部がんは、肥満、糖尿病、高血圧の女性に多いことも知られております。

子宮体部がんは、タモキシフェンというホルモン剤の投与を受けている乳癌の方に見つかることが時々あります。このホルモン剤を服用するのであれば、子宮体部がんの検査を定期的に受けることが大切です。更に乳がんや大腸がんの方には、子宮体部がんの発生する割合が少し高いことが知られていますのでこのような方も定期的に産婦人科の検査を受けられたほうが良いでしょう。

診断

内診(腟内に手指を挿入し、子宮を診察)し、子宮の形状や大きさを調べ、それから細胞採取のために綿棒などを使って、子宮頸部の外側と腟をこすり、細胞診をします。しかし子宮体部がんは子宮の内側より発生するので、普通の頸部がんの細胞診で癌は見つけられません。子宮内膜の異常を検査するためには、頸管拡張と掻爬(そうは:子宮内膜を含め、子宮内腔内の異常組織を掻き出す)あるいはキュレットという金属性の細い棒の先に小さな爪のある器具を奥に入れて組織の一部を採取します。少し痛みがありますし、検査後、数日少量出血することがありますが検査によるものですので心配はありません。採取された組織は癌細胞の有無などを調べるために組織診断に提出されます。

病期(ステージ)日本産婦人学会2011年, FIGO 2008

子宮体部がんが内膜から他の部位へどれほど拡がっているかどうかを調べるために超音波検査やCT、MRIによる画像検査によって癌進行程度を診断します。子宮体部がんの病期分類は子宮頸部がんと異なり、手術治療後の病理検査結果に基づいて決定されます。

Ⅰ期 癌が子宮体部に限局するもの
ⅠA 期 癌が子宮筋層 1/2 未満のもの
ⅠB 期 癌が子宮筋層 1/2 以上のもの
Ⅱ期 癌が頸部間質に浸潤するが、子宮をこえていないもの
Ⅲ期 癌が子宮外に広がるが,小骨盤腔をこえていないもの、または所属リンパ節へ広がるもの
ⅢA 期 子宮漿膜ならびに/あるいは付属器を侵すもの
ⅢB 期 膣ならびに/あるいは子宮傍組織へ広がるもの
ⅢC 期 骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
ⅢC1 期 骨盤リンパ節転移陽性のもの
ⅢC2 期 骨盤リンパ節への転移の有無にかかわらず傍大動脈リンパ節転移陽性のもの
Ⅳ期 癌が小骨盤腔をこえているか,明らかに膀胱ならびに/あるいは腸粘膜を侵すもの、ならびに/あるいは遠隔転移のあるもの
ⅣA 期 膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
ⅣB 期 腹腔内ならびに/あるいは鼠経リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの

予後と治療選択

幸い子宮体がんの7割はⅠ-Ⅱ期の早期で発見されます。従って総じて治りやすい癌といえます。治療の選択は病期(癌が子宮内膜に限局しているかどうか、子宮頸部や子宮外に拡がっているかどうか)と全身状態によります。

予後は、癌浸潤(しんじゅん:癌が子宮壁に食い込んでいくこと)の深さ、リンパ節転移の有無、顕微鏡下のがん細胞の組織分化度を加えて推測されます。今後に妊娠を希望される場合には、子宮を取らずに薬剤で治療することもあります。しかしすべての患者さんに適応があるわけではなく、がんが子宮の筋肉内に食い込んでいないこと、癌腫がおとなしいタイプであることが条件となります。

治療

外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法の4つの治療方法があります。病気の拡がりに応じ、組み合わせます。

外科療法

手術で癌を切除し、癌の拡がりを正確に診断、化学療法などの追加の必要性を判断します。病期により術式の選択がされます。術式の違いは、切除範囲の違いで、癌が進行すれば切除範囲を広げます。しかし、切除範囲を広げると手術による障害も起こりますので総合的に考え、適切な術式を選択します。子宮体がんでは1期であっても5%ぐらいの割合で卵巣転移があるとされますので、卵巣摘出も同時に行います。早期の場合には内視鏡手術や、ロボット支援下手術も可能です。

  • 単純子宮全摘出術と両側付属器(卵巣と卵管)切除術
    (開腹手術、内視鏡手術、ロボット支援下手術)
    子宮、卵巣、卵管を切除します。手術前診断でⅠa期の場合には標準的にはこの手術が行われます。
    手術前診断でⅠb期以上の場合、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を追加する場合があります。
  • 準広汎子宮全摘出術/広汎性子宮全摘術
    子宮、卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めて広汎に切除します。この術式は、術前の診断で癌が子宮頸部におよんでいる場合(Ⅱ期、およびⅢ期の一部)などに選択されます。
    腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合もあります。

化学療法

化学療法は癌細胞を殺す抗癌剤を使用します。内服あるいは経静脈的に投与します。別名全身的治療とも呼ばれ、薬剤が血流に入って全身をめぐり、子宮外の癌細胞を殺すからです。化学療法を単独で行うのは、病気がすでに全身に広がっている場合(Ⅳ期の一部)などがあります。手術後に化学療法を行うのは、病気が子宮外に拡がっている場合など(Ⅲ/Ⅳ期)です。

ホルモン療法

ホルモン療法は、癌細胞の発育を抑えるために女性ホルモン剤を使用します。黄体ホルモンの働きのある経口内服剤を用いられます。癌病巣を含む子宮内膜をすべて掻爬する治療と組み合わせます。また、再発の危険性の高い症例の補助的治療として、あるいは化学療法の効果が不十分な場合や全身状態不良で化学療法が不可能な場合に、化学療法に代わり全身的治療として施行することもあります。

放射線療法

放射線治療は、放射線治療を希望される場合や、高年齢あるいは他の病気のために手術の行えない場合や病気の拡がりのため手術を行うことが困難な場合(ⅢやⅣ期の一部)などに選択されます。子宮体がんは放射線感受性が低く、第一選択の治療ではありません。放射線治療は身体の外から行う外照射方法と、アイソトープを充填したプラスティックをがんの存在する部位に設置して行う腔内照射方法があります。手術後に放射線療法を行うのは、リンパ節転移を認めた場合、病変が子宮の壁に深く浸潤した場合、腟壁に浸潤した場合などがあります。

放射線治療

放射線治療には癌細胞を殺し、腫瘍を縮小するためにX線や高エネルギー線が用いられます。最近では抗がん剤を併用する方が治療効果が高いことがわかり、放射線治療と並行して化学療法が行われます。
合併症のため手術ができない場合や手術では取りきれないと考えられる場合には、放射線治療が選択されます。また手術単独では再発リスクが高いと考えられる場合には、手術後に放射線治療を行います。

再発

治療後で癌が再び発生することです。再発は、治療後の子宮、腟、骨盤内の組織に発生する局所的再発と、肺や肝臓に転移する遠隔転移再発があります。割合はほぼ同じです。局所再発に主として放射線療法が行われますが、孤立性の遠隔転移には外科療法が行われることもあります。多臓器の再発や転移のある場合には、ホルモン化学療法が行われることがあります。再発の場合には固定した治療法ではなく、部位や再発様式にあわせて個人に最適な治療を検討し対策をとりますが孤立性の肺転移あるいは腟壁再発を除けば予後は不良です。治癒させる目的ではなく、腸閉塞を解除するための外科療法や、骨転移によっておこる痛みを軽くするための放射線療法など、症状を軽くする治療(対症療法)を行う場合もあります。