部門紹介・業務内容
不整脈科の特徴
当院は24時間体制で循環器内科医が緊急対応できるよう院内に待機し、迅速・的確に検査、処置できるシステムが完成されております。このため不整脈でお困りの患者様をいつでも受け入れることが可能です。また当院は総合病院であることより、他疾患を合併した患者さんに対しても、他科と連携をとりチーム医療を提供することができます。
2025年6月より不整脈治療専用のカテーテル手術室を増設しました。これにより不整脈治療の手術枠が拡大しました。このカテーテル手術室はハイブリッド手術室と同様の清潔度を確保しておりアブレーション治療に加えてペースメーカなどのデバイス手術にも対応しています。

不整脈とは
不整脈とは脈の打ち方が正常と異なり、脈が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)と、脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)に分けられます。洞結節や房室結節、右脚・左脚などの刺激伝導系(心臓内を走行する電線)に電気刺激が流れ伝わる事により、正常な心臓は必要な脈をリズム良く打つことができます。これら刺激伝導系に異常を来たすことにより、徐脈性・頻脈性不整脈や不規則な脈が発生します。不整脈の中には、突然死などを引き起こすような危険度の高いものや、著しく日常生活に支障を来たすもの、定期的な経過観察で良いものまで様々なものがあります。また何からかの全身疾患(ホルモン異常や電解質異常など)や心臓疾患(心筋梗塞、弁膜症や心筋症など)により不整脈が引き起こされる事も少なくありません。不整脈を指摘されたら、その危険度の評価、原因となるような疾患の精査が必要となります。

徐脈性不整脈
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
- 徐脈性心房細動
頻脈性不整脈
- 期外収縮
- 心房細動/心房粗動/心房頻拍
- 発作性上室性頻拍
- WPW症候群
- 心室頻拍/心室細動
- QT延長症候群
- Brugada(ブルガダ)症候群
不整脈治療
不整脈治療の適応症例には、高リスクと判断されるものおよび日常生活に支障を来す症例が含まれます。基礎疾患が不整脈の病因である場合は、まず基礎疾患治療が優先されます。
徐脈性不整脈の治療
《ペースメーカ手術》
洞不全症候群や高度房室ブロックの徐脈性不整脈には、体外式ペースメーカを使った応急処置が行われます。必要に応じて各症例に適したペースメーカ植え込み手術も実施します。最近では、リードレスペースメーカや皮下植え込み型除細動器も多く使用しています。
《リードレスペースメーカ手術》
2017年10月から、リードレスペースメーカの植え込みが可能になりました。当初は心室をペーシングするデバイスのみでしたが、2025年7月からは心房ペーシングが可能なデバイスも導入されました。このペースメーカは非常に小型で、本体を皮下に植え込むのではなく、カテーテルを用いて心臓内に留置されます。小さなフックやスクリューで直接心臓の筋肉に固定し、先端の電極を通じて電気刺激を送りペーシングを行います。従来のペースメーカは、鎖骨下付近の前胸部に皮下ポケットを設けてデバイス本体を植え込み、静脈を通してリードを心臓内に留置する必要があります。リードレスペースメーカは皮下ポケットもリードも不要であるため、それらに関連した合併症(創部の感染、リード断線など)の危険がありません。また外科手術による胸部の傷もなく、外から装置のふくらみもありません。そのため、ペースメーカが留置されていることを意識することなく生活でき、上肢の運動制限もありません。当院では積極的にリードレスペースメーカ手術を行い、250例以上の症例手術を行っています。手術時間も短く、患者への負担が少ないこともメリットです。


頻脈性不整脈の治療
《カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)》
頻脈性不整脈(期外収縮、心房細動/心房粗動/心房頻拍、発作性上室性頻拍、WPW症候群、心室頻拍)に対しては、薬物療法による発作予防が試みられます。また、近年ではカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)による根治治療が確立されております。カテーテルアブレーションとは、異常な電気興奮の発生箇所や原因部位を特定し、その部位を焼灼することによって不整脈を根治させる治療法です。アブレーション治療用のカテーテルを大腿部から血管経由で心臓に挿入し、カテーテル先端から高周波電流を流して病変部位を焼灼します。この治療の際には、個人差のある心臓の解剖学的構造と異常電気回路を同時に三次元で表現できる3Dマッピングシステム(Ensite、CARTO)を使用しております。

《心房細動治療》
心房細動とは心臓の上の部屋(心房)がふるえるような状態となり脈拍が不規則になる不整脈です。加齢に伴いその頻度は増加していき、今後100万人をこえる患者数になると推定されています。動悸、胸部不快感、倦怠感などの症状に加えて、心房内に血栓(血の塊)を形成することがあります。この血栓が心臓から飛び出してしまうと全身の動脈を詰まらせてしまう血栓塞栓症(脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈閉塞など)を引き起こします。この血栓塞栓症は時に致命的となることがあるため、血液をサラサラにする薬(抗凝固療法)が必要になります。抗凝固療法は血栓塞栓症を予防することが出来る一方、出血性合併症のリスクも伴います。安全に抗凝固療法の継続ができれば良いのですが、出血の問題で治療継続が難しい患者さんもいます。このような患者さんに対して2021年4月よりカテーテルを使用した左心耳閉鎖術を導入しています。
当院では心房細動に対するアブレーション治療を積極的に行っています。心房細動のアブレーションでは、左心房に開口する肺静脈周囲を電気的に隔離することで心房細動のきっかけとなる刺激を抑制する方法を中心に手術を行なっています。高周波アブレーションは、点の焼灼を連続的につなげて隔離するため、自由なライン取りが可能です。また、冷凍凝固バルーン(Cryo Balloon)アブレーションでは、バルーンを肺静脈の入り口に密着させ冷却することで低温やけどを作り、手技時間を短縮できます。
2024年11月からは、電気穿孔法を用いたパルスフィールドアブレーションも導入しています。電気穿孔法は、細胞膜に高電圧の電気パルスを一時的に加え、小さな孔を作る技術です。この技術を応用して、不整脈の治療を行います。不整脈の原因となる心筋に対して1500-2000Vの電気パルスを加え、心筋細胞膜に多数の孔を形成し不可逆的なダメージを与えます。一方で、心臓の周辺組織(血管や神経など)は電気パルスへの耐性が強く、食道関連合併症や神経障害を抑えることができます。そのため、従来の高周波や冷凍アブレーションに比べて安全性が高く、合併症のリスクが軽減されるとされています。手技時間も短く、安全性も高いことから、今後心房細動の治療方法として多く利用されることが期待されています。当院でも早期からパルスフィールドアブレーションを導入し、心房細動治療に取り組んでいます。2026年3月からはパルスフィールドアブレーションと高周波アブレーションのエネルギー切り替えが可能なAfferaシステムも導入されます。
当院の心房細動アブレーションでは、全身麻酔を使用し、患者さんの痛みや苦痛がないよう努めています。

《高周波通電によるアブレーション》


《Ensite 3D Mapping System》

《CARTO 3D Mapping System》

《冷凍凝固バルーンによるアブレーション》

《パルスフィールドアブレーション:Pulsed Field Ablation》



《植え込み型除細動器(ICD、S-ICD、EV-ICD)植え込み手術》
心室頻拍や心室細動、QT延長症候群、Brugada(ブルガダ)症候群などの致死性不整脈に対しては、突然死を防ぎ、迅速な致死性不整脈治療を行うために植え込み型除細動器(ICD、S-ICD、EV-ICD)の手術が必要となります。従来のペースメーカーと同様に前胸部にポケットを作成し、心臓内にリードを留置するICDと、心臓内にリードを留置しないS-ICD、EV-ICDがあります。
《皮下植え込み型除細動器(S-ICD)》
2016年8月より、皮下植え込み型除細動器の手術が開始されました。この手術では、胸骨前面から肋骨沿いに皮下リードを挿入し、左側胸部に留置された本体に接続します。心臓内へのリード挿入を必要とせず、致死性不整脈に対する除細動治療が可能となるため、手術時の心筋損傷リスクおよび機械本体やリード感染発症時の抜去手術リスクを回避できるデバイスです。手術後のリード位置ずれのリスクが低く、術翌日には病棟内での歩行が可能となります。致死性不整脈に対する有効な治療法として認識されています。測電池寿命 約7.3年、1.5T/3T条件付きMRI撮影に対応しています。
手術は全身麻酔下で実施され、所要時間は約1時間です。

《血管外植え込み型除細動器(EV-ICD)》
2025年11月より、血管外植え込み型除細動器の手術が可能になりました。
EV-ICDは、心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈を検知し、電気的除細動治療に加えて抗頻拍ペーシング(ATP)で心拍を正常に戻す植え込み型デバイスです。最大の特長は、リードを血管内ではなく胸骨の下に留置することで、血管損傷や血管閉塞などの合併症リスクを軽減できる点にあります。また抗頻拍ペーシング(ATP)により、ショック治療を回避できる可能性が大きな利点になります。デバイスのサイズも従来のICDと同程度の大きさでポケット内に留置した際の違和感を軽減できます。予測電池寿命 約11.7年、1.5T/3T条件付きMRI撮影に対応しています。
手術は全身麻酔下で実施され、所要時間は約2時間です。

《心臓再同期療法(CRT)》
高度に心機能が低下している重症心不全の症例の中には、右心室と左心室の間に収縮のタイミングのずれが存在することで、さらに心機能が悪化しているものがあります。これらの症例では、右心室と左心室にペーシングリードを挿入し同時にペーシングを行うことで、収縮のタイミングのずれを補正し、心機能を改善させる心臓再同期療法(CRT)を行います。重症心不全の症例には致死性不整脈の合併も多いため、症例に合わせてCRT-P(両心室ペーシングのみ)、CRT-D(両心室ペーシング+除細動器付き)の選択を行っています。また、ペースメーカーや植込み型除細動器からのアップグレード手術も実施しています。

診療日時・受診方法
受診される患者さんへ
診療時間は午前8:30からです。初診のかたは午前8:30から11:00までになるべくお越しください。なお、かかりつけ医のあるかたは、病診連携を通じて外来予約を取っていただけます。かかりつけ医の先生にご相談ください。
患者さんの病状などにより、診察時間の遅れや順序が変更する場合がありますのでご了承ください。
学会などでまれに休診になることがあります。予約外で受診される方はお電話にて確認していただいてから来院されますようお願いいたします。
ご紹介いただけます先生方へ
病診連携を通じ、外来予約を取っていただくことができます。お手数ですが当院ホームページ上の"地域医療連携"より指定のFax用紙を出力いただき、Fax頂きますようお願い申し上げます。
患者さん受診の際には、心電図、Holter心電図など検査結果を持参させていただけると大変参考になります。
緊急を要するような場合は当センター058-246-1111から、循環器内科部長 野田俊之、小児循環器科不整脈科 後藤浩子、救命救急センター(夜間)へご連絡ください。
のだ としゆき
野田 俊之
| 役職 |
|
|---|---|
| 認定資格 |
|
わりた しゅんいちろう
割田 俊一郎
| 役職 |
|
|---|---|
| 認定資格 |
|
おおしま よしたけ
大島 功丈
| 役職 |
|
|---|---|
| 認定資格 |
|
外来担当医表
| 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 小児不整脈 |
ー |
ー |
ー |
ー |
後藤 浩子 |
| 成人不整脈 | 野田 俊之 (午前) |
ー |
野田 俊之 |
野田 俊之 (午前) |
割田 俊一郎 (午前) |
診療実績
心臓植え込みデバイスの新規手術+交換手術症例実績
| PM | Leadless PM | ICD | S-ICD | CRTP | CRTD | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | 56(23) | 40 | 13(5) | 8 | 4(1) | 5(1) |
| 2019 | 54(43) | 31 | 6(7) | 4 | 5(0) | 7(2) |
| 2020 | 50(41) | 29 | 8(11) | 4 | 4(2) | 7(4) |
| 2021 | 60(51) | 25 | 5(6) | 5(1) | 8(1) | 4(4) |
| 2022 | 50(41) | 29 | 8(11) | 4 | 4(2) | 7(4) |
| 2023 | 40(49) | 26 | 11(11) | 10 | 1(2) | 3(5) |
| 2024 | 52(58) | 30(3) | 6(12) | 7(2) | 9(1) | 7(4) |

カテーテルアブレーション症例実績内訳
| AFib RF | AFib Cryo | AFib PFA | AFL | AT | AVNRT | WPW | PVC | VT | その他 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | 117 | 53 | - | 7 | 6 | 23 | 9 | 11 | 3 | 3 |
| 2019 | 98 | 67 | - | 14 | 15 | 32 | 11 | 17 | 3 | 1 |
| 2020 | 100 | 68 | - | 13 | 23 | 20 | 5 | 17 | 5 | 4 |
| 2021 | 105 | 89 | - | 6 | 16 | 21 | 10 | 7 | 2 | 0 |
| 2022 | 116 | 83 | - | 4 | 27 | 19 | 5 | 4 | 2 | 2 |
| 2023 | 124 | 96 | - | 7 | 19 | 23 | 3 | 8 | 5 | 0 |
| 2024 | 124 | 91 | 31 | 11 | 16 | 9 | 5 | 19 | 3 | 3 |
AFib(心房細動) RF(高周波アブレーション) Cryo(冷凍凝固バルーンアブレーション)
Laser(レーザーバルーンアブレーション) AFL(心房粗動) AT(心房頻拍)
AVNRT(房室結節回帰性頻拍) WPW(WPW症候群)
PVC(心室性期外収縮) VT(心室頻拍)
カテーテルアブレーションの年次推移










