産科・胎児診療科(産婦人科)

医師スタッフの紹介

役職 産科部長・母とこども医療センター長
    母体・胎児集中治療室部長
氏名 高橋 雄一郎

日本周産期・新生児医学会 母体・胎児専門医、指導医、評議員
日本産科婦人科学会専門医・指導医
日本母体胎児医学会 幹事
日本胎児治療学会 幹事、事務局長
母体保護法指定医

役職 胎児診療科部長・産科主任医長
氏名 岩垣 重紀

日本周産期・新生児医学会 母体・胎児専門医・指導医

日本産科婦人科学会専門医
日本胎児心臓病学会 胎児心エコー認証医
日本超音波医学会 超音波専門医
日本産科婦人科学会 産婦人科指導医
日本超音波医学会 超音波指導医(産婦人科)

母体保護法指定医

役職 医長
氏名 浅井 一彦

日本周産期・新生児医学会 母体・胎児専門医

日本産科婦人科学会専門医

役職 医長
氏名 松井 雅子

日本周産期・新生児医学会 母体・胎児専門医

日本産科婦人科学会専門医

役職 医師
氏名 島岡 竜一

日本産科婦人科学会専門医

役職 医師
氏名 小野 ひとみ

日本産科婦人科学会専門医

 

役職 医師(専攻医)
氏名 神田 明日香

 

役職 医師(専攻医)
氏名 大城 華佳

 

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産科診療

 当科は、岐阜県の総合周産期母子医療センターとして、異常妊婦を中心に診察をしています。具体的には、早産、合併症妊婦、胎児に異常を抱えた妊婦さん等の診療となりますが、一方で普通の分娩も取り扱っております。
 

  2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
分娩件数 504 468 446 490 599
早産 82 78 114 117 135
帝王切開 233 219 198 259 313
緊急搬送 170 136 144 126 136

新しい周産期診療 胎児診療科(産科)

 既存の産科診療に加えて胎児治療、胎児管理、出生前診断、母体管理などをはじめとした高度な医療を開始し、当院も新時代の総合周産期センターとして2019年4月に生まれ変わりました。今まで助からなかった生命に少しでも光が当たり後遺症のない健康な赤ちゃんの誕生を目指しスタッフ全員で日々奮闘しております。また新しい医学教育の形や、全員主治医制というチーム医療による働き方改革など新しい産科メニューも次々と導入しているところです。また産後サポート、心の内面にも寄り添った優しい診療も目指しています。
 岐阜県、そして日本の未来の希望はこれから生まれくるこどもたちです。その出産という喜びのシーンの背景にはとても危険を伴う瞬間もありますので、安全にしっかりとお支えする医療体制を構築しています。
 病床数も限られており皆様にはご迷惑をおかけすることもありますが、なるべく多くの方のご期待に応えられるよう病院をあげて頑張ってまいりますので今後ともよろしくお願い申し上げます。  

          


胎児診療科(+ハイリスク産科)、産婦人科の専門性

 我々は、近年の医療の専門性の進歩から、産婦人科医療も専門性の維持の必要性を重要視しています。診療のみならず、教育のためには、エキスパートがよりその専門性を磨き特化した医療の推進の必要があります。それは内科でも内分泌や循環器、外科では消化器と循環器が別れているのと同じことでしょう。胎児診療科では、胎児治療、出生前診断から胎児循環評価、母体合併症管理の専門性を維持、更新するだけではなくベーシック産科学に関しても臨床研究を行い高みを目指しています。何より症例が多く、短期間で普段経験できない症例を全員主治医制により経験を共有することができます。
 一方で産婦人科専門医を目指す研修医にはその医師の希望に沿ったローテーションを円滑に行い、産婦人科全般をローテーションできるようなシステムを構築しています。

          


臨床実習、選択実習を希望される医学生の皆さんへ

 現在、岐阜大学から毎週2-3人の医学生、一ヶ月間の選択実習も受け付けております。
 また初期研修医も病院全体で受け入れております。お気軽にお尋ねください。
 ミニレクチャー、日々のカンファレンス参加など普段は体験できないような基本からハイレベルな内容まで幅広く、また深く研修していただけます。

     https://staff.gifu-hp.jp/kenshui/


夢プロジェクト「ぎふの産婦人科医の魅力」    https://www.gifuosan-yume.net/

をご参照ください。

 

胎児ドック

 あかちゃんのさまざまな問題点は、超音波画像診断の進歩により出生前に明らかにされることが増えてきています。現在、当院は、東海地方を中心とする、胎児疾患の診断、治療などの管理を専門的に行っています。そのため、ほぼすべての胎児疾患に対応すべく、日々診療にあたっています。必然的に、早い時期からの超音波診断にも力を入れています。
 具体的には,妊娠初期(11-14週)、妊娠中期(18-20週前後)、妊娠後期(28-30週前後)に、胎児の大きな問題がないか、流早産や、妊娠継続に大きな問題がないかなど、通常の健診よりも時間をかける専門的な「胎児ドック」を行います。主に、初期、中期では、胎児の生命に関わる大きな構造異常がないかを中心に、後期では出産に向けて大きな問題がないか、胎児発育や後半に発症する心機能、胎盤循環異常などにも焦点をあてて確認致します。胎児疾患に関しては、羊水量、脳神経、顔面、骨疾患、心臓、肺、腎臓、腸など多岐にわたって観察を行います。また、臍帯、胎盤位置,必要に応じて子宮頸管長(早産のリスク評価)なども評価しています。安心して出産できるかどうか、あかちゃんの命に関わる問題がないかなど、総合的な周産期評価をおこない、あかちゃんに関する不安にお答えできるように説明させていただいております。
 万一、何らかの問題点が指摘された場合には、さらに詳細な検査を行います。その上で、小児科、小児外科など、出生後の管理を行う診療科と検討し、最善の策を考えていきます。

(後ページ参照)

胎児心臓超音波検査

 先天性心疾患は約100人に一人のあかちゃんに認められ、胎児の形態異常の中では最も頻度の高いものの一つとされています。しかも、出産直後からの治療を開始しないとあかちゃんの命にかかわってしまう重篤なものもあるのです。また本疾患がきっかけとなって、他の様々な胎児異常が見つかることもあります。こうした理由で胎児の先天性心疾患の診断は、出生前診断の中でも最も重要なもののひとつなのです。しかし心臓は非常に複雑な臓器なので、胎児の先天性心疾患は出生前診断が非常に難しく、診断率が施設や地域によって大きく異なることが問題となっています。
 当院は、先進医療としての「胎児心臓超音波検査」が可能な施設としての認定を受けており、母体胎児専門医、小児循環器科医をはじめ、常に胎児の心臓スクリーニングを行っている経験豊富なスタッフにより胎児の心臓超音波検査を行っております。また先天性心疾患が診断された場合は、連携の上綿密な治療計画をたて、あかちゃんが最良の条件で治療のスタートを切れるようにサポートを行っております。先天性心疾患が見つかってしまうことは非常にショックな出来事ですが、生まれる前に見つかることで、一番いい治療法を準備することができるのです。それこそがあかちゃんの持つ可能性を最大限に生かしてあげられるチャンスなのです。可能性を信じてあげれば、あかちゃんもきっと頑張ってくれるはずです。あかちゃんの持つポテンシャルを最大限に発揮してもらうため、今日も我々はあかちゃんの病気に目を光らせています。
 

早産リスク評価外来(早産、破水や感染性流産の既往歴のある方のリスク評価と予防対策)

 前回の妊娠で切迫早産になって長期入院が必要であった方、また破水や感染による流産になった方は次の妊娠が非常に心配であろうと思います。このような方に対する次回の対策は未だに定まったものがありません。我々は長良医療センター時代から、予防的な対応を重視して妊娠初期から専門医によるリスク評価を行い、患者さんのリスクに合わせた対策を講じることで早産を実際に減らすことに成功してきております。現在も、 総合周産期センターということで、妊娠20週で破水された方や妊娠22週で胎胞が見えてしまった方などが次々と搬送されてきます。しかし、そのような「大火事」になる前に、妊娠初期より早産ハイリスクの評価を行い予防的な対策をとることが重要と考えております。そのような既往歴のある方、また妊娠初期から出血を繰り返している方などは流産、超早産のリスクが高いのでできるだけ早く外来にお越しいただき、予防的な対応が間に合うように策を講じていければと考えます。かかりつけ医の先生と相談いただき、当院の専門医の外来受診をしていただければと考えております。

早産予防プロトコール

 早産で出生した児には、臓器が未熟であるため様々な合併症がおこる可能性があり、特に早い週数での早産は、時に児の命に関わる重大なリスクとなり得ます。早産はそんな怖い一面を持つため、是非とも予防をしたい疾患ですが、原因がはっきりわからずに繰り返してしまうこともあります。当院ではそれぞれの妊婦さんの過去の妊娠経過、妊娠初期の検査所見や診察所見より早産リスクを評価しています。早産リスクが高いと判断される場合は、感染、炎症予防を中心とした『早産予防プロトコール』を推奨しています。もちろん全例で早産を予防できるわけではありませんが、繰り返す早産歴のある方や多胎妊娠といった通常よりも早産のリスクが高い方においても一定の効果を上げています。

 


子宮頚管縫縮術

 子宮頚管無力症に対する予防的な治療法で腰椎麻酔下で行います。
 妊婦健診では経腟超音波法を行い、子宮頚管長を計測します。初期からの子宮頚管長の短縮は流早産のハイリスク群であり、全く自覚症状を伴わずに子宮口が開大してくることもあります(子宮頚管無力症)。このような短い頸管長を認めた場合で、そのほかの所見も加味して総合的に判断し、必要な場合にはこの手術を行います。
 手術時は針付きの縫縮専用のテープを用いて、子宮頚管を縫縮します。シロッカー法とマクドナルド法がありますが、流早産の予防効果はどちらでも大きくかわりないといわれており、当院では通常マクドナルド法を行っております。
 この手術を行ったから早産の管理が必要ない、というわけではありません。入院管理となった場合に少しでも妊娠期間の延長を図るための補助的な治療と考えてください。
 経過が安定しているようであれば、経腟分娩予定の場合は妊娠36週頃、帝王切開予定であれば帝王切開後に抜糸します。
 本治療のエビデンスの構築は未だ道半ばではありますが、症例によっては効果を上げるケースもありますので、条件をよく加味して行うか決定しています。

          

早産予防 ペッサリー

 妊娠経過の目標の一つは正期産(妊娠37週以降)での分娩であり、妊娠37週未満の分娩は低出生体重児となるリスクが高く、また出生後十分な新生児管理を行ったとしても児の呼吸障害やその後の神経発達に大きな影響を及ぼす可能性があります。このため、切迫早産に対し入院安静や薬物治療を行っています。子宮頸管ペッサリーは海外の研究において、母体の入院期間や薬物投与による負担を軽減できる可能性が示唆されております。スペインで行われた無作為割り付け試験では切迫早産の予防として子宮頸管ペッサリーを装着した群は通常の切迫早産治療群と比べ、妊娠34週未満の早産が有意に低かったとしています。また、他にも子宮頸管ペッサリー群は通常の切迫早産治療群と比べ早産を減少させたとの報告もあります。子宮頸管ペッサリーは経腟的に子宮頸管周囲に装着することで切迫早産を予防するとされ、装着後入院期間の短縮、投与薬物量の減少、長期安静に伴う母体への合併症軽減が可能となる可能性が推定されています。
 本ペッサリーは2020年2月現在、本邦では切迫早産への保険適応はまだないため保険適応外使用となります。現在、国内で保険収載を目指した動きが進んでいるようです。
 当院では、ご自身でご購入いただいたペッサリーを内診時に膣に挿入するお手伝いをさせていただきます。このことで子宮の下降を防ぎ、少しでも子宮口開大を予防し、安全に妊娠期間の延長を図れればと考えます。なお有害事象としては帯下(おりもの)の増加が報告されていますが、臨床上は大きなものではありません。

          


TTTS (双胎間輸血症候群)

 双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusion syndrome : TTTS)は、一卵性の双子の中でも一つの胎盤を二人の胎児で共有するタイプ(一絨毛膜双胎)の5-10%に起こる病気です。双子の間での血液のやりとりのバランスが崩れることによって起こり、一人の羊水量が非常に多くなり、もう一人の羊水量が非常に少なくなってしまいます。どちらの児も状態が悪くなる可能性があり、重症なTTTSでは無治療の場合、死亡率が90%と非常に高いことがわかっています。重症TTTSに対する胎児治療としてレーザー治療(胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術;FLP)を行うことで、児の生命予後、神経学的予後が改善することが期待でき、日本では9つの病院で治療が可能です。2019年に当院へ長良医療センターから胎児治療チームが移動し当院でのレーザー治療が可能となりました。現在は岐阜県内だけではなく、東海、北陸、近畿地方から患者さんのご紹介をいただいています。2012年より保険収載されています。

 

  

   
        

無心体のラジオ波焼灼術 (RFA)

 一絨毛膜双胎では 2 人の胎児で 1 つの胎盤を共有しているために、各々の胎児の血液循環は全く独立したものではなく、つながっています。無心体には血液を送りだす心臓がないので、健常児の心臓は自身の体と無心体の 2 つの体に血液を送らなければなりません(健常児の心臓は、2 人分の仕事をしています)。このような状態が続くと、健常児の心臓はこの過剰な心臓への負担のため、心不全となり全身のむくみ(胎児水腫といいます)をきたすこととなります。また、突然無心体の血流が途絶えると、健康なあかちゃんも死亡に至る怖い病態です。そのため胎児治療をしない場合の死亡率は高いといわれています。当院でも健常児から無心体への血液の流れをラジオ波で止めて、健常児の心臓の負担を減らすラジオ波焼灼術(RFA)を行なっています。2019年より保険収載されました。妊娠15週以降での治療適応が出てきますので詳細は外来でご相談ください。

 
 (引用 髙橋ら 東海産婦人科学会雑誌 2011)        

胎児胸水

 胸水とは胸郭の中(肺の周り)に水がたまってしまう状態で様々な原因によって起こります。胎児の心臓の病気や血液の病気、感染症などが原因で起こるもの(二次性胸水)と、胸郭内にリンパ液が漏れ出す乳び胸(原発性胸水)では管理方法が異なるため、正確な診断が必要です。二次性胸水の場合はその原因疾患を突きとめ、胎児期にその疾患に対する治療を行ったり、出生後の管理につなげていきます。乳び胸において胸水が大量の場合には胸腔内臓器(肺、心臓、食道など)が圧迫されるため、肺の形成障害や心臓のポンプ機能不全がおこり、児の生命に関わる危険性があります。当院では児の大量胸水に対する胎児治療:胸腔羊水腔シャント術を行っております。胸腔羊水腔シャント術は、超音波ガイド下に柔らかいチューブを児の胸壁に設置することで、胸水を持続的に羊水腔内へ排出することが可能にする治療法です。シャントチューブ設置により、心臓の機能の改善や肺低形成の予防をはかり、治療前に胎児水腫に陥っていた重症な児も約70%で救命することが可能です。
 2012年に保険収載されています。

        

胎児輸血

 おなかの中のあかちゃんも、さまざまな原因によって貧血になることがあります。大人の場合、血液検査によって貧血があるかどうか調べますが、おなかのなかのあかちゃんも基本的には同じ血液検査で調べます。超音波で確認しながら、お母さんのおなかを通して針を刺し、臍帯から血液をとります。これは簡単なことではありません。そのため最近では、治療を必要とする貧血があるかどうかを、超音波検査で推測する方法が知られています。赤ちゃんの頭の中大脳動脈という部分の血流速度を測る方法です。超音波検査で胎児貧血が疑われた場合、臍帯穿刺を行い、臍帯血の採血をして確認します。
 血液型不適合:母体Rh(-)で胎児がRh(+)の場合、またその他の不規則抗体をもっている場合、胎児貧血を起こすことがあります。
 母児間輸血:非常に稀なことですが、児の血液が母体血液内へある程度の量流入し、児の血液に対する抗体を作ってしまうことがあります。母体血液内に胎児の赤血球成分(HbF)がたくさん検出されるかどうかで、診断します。
 胎児水腫(パルボウイルス感染):妊娠中にリンゴ病の原因であるパルボウイルスに感染すると、中には胎児感染を起こし、胎児貧血となりむくみを起こす場合があります。母体血液検査で、最近初めての感染があったかどうかを調べます。
 超音波で臍帯静脈の位置を確認しながら、採血に使う細い針を用いて、臍帯静脈を穿刺し、輸血を行います。貧血の原因によっては、何度か輸血を繰り返すこともあります。 
 上記のリスクがあっても、ほとんどの場合は輸血を必要とする様な胎児貧血とはなりません。しかし慎重に経過をみていないと貧血のサインを見逃すこととなり、治療のタイミングを逃してしまいます。そうなると、胎児の脳障害や、胎児死亡を起こすこともあります。まずは、胎児貧血を起こすリスクがあるかどうかの判断が重要となります。
 2020年保険収載となり、胎児治療を行う施設でおこなわれる治療として認知されています。

   
        

人工羊水注入療法

 羊水とは子宮内で胎児のまわりにある水で、ほとんどが胎児の尿からできています。
 実際に羊水量を測定することは非常に難しいので、簡単な計測法として超音波検査による測定方法が知られています。妊娠後期では、子宮の4か所で羊水の深さを測定し、それを合計したAFI(Amniotic Fluid Index)という値です。妊娠週数によっても変動はありますが、おおよその目安として8cm未満は羊水過少、25cm以上は羊水過多とされています。また双胎や妊娠早期の場合は全体の量だけでは判断できないので、個々の胎児のまわりの最大の1スペースに羊水の深さがどれくらいあるのかを測定します。2cm未満を羊水過少、8cm以上を羊水過多と考えます。

<羊水過少症の原因>
 破水したり、胎児の尿が少なくなったりすると、羊水過少症となります。羊水過少が発見された場合、まず破水がないか確認します。水っぽい帯下を自覚できることがほとんどですが、中には気づかないうちに破水していることもあり、診察時に羊水の流出がないか見て判断します。破水は母児の感染リスクになり、また時期によってはあかちゃんの救命が難しくなることもあるため、早期発見はとても重要なことです。
  胎児の尿が少なくなる原因として、胎児の腎機能不全や尿路閉塞もあります。早い時期に羊水過少が進行してくるものには、重症で救命が困難な病気もあり、まずは超音波検査での診断が大事です。しかし羊水が全くない状態では超音波検査で正確な診断をするのが難しくなるので、場合によっては羊水注入を行い観察しやすくすることもあります。妊娠中期に羊水が減少してくる場合、胎児発育遅延などにより、胎盤機能の低下が関係していることがあります。

<人工羊水注入療法>
 羊水は胎児の周りでクッションの役割をはたしており、臍帯の圧迫などを防いでくれています。そのため、羊水が減ってくると臍帯が圧迫を受けやすくなり、胎児の低酸素状態を引き起こすことがあります。重症の場合には胎児死亡の危険もあるため、早く分娩し胎外で治療してあげる必要が出てきます。しかし早産によるリスクが考えられる非常に早い週数では、少しでも妊娠期間を延長するため、当院では人工羊水注入を行っています。羊水注入とは、超音波で子宮内の様子をみながらおなかに針を刺し、温めた生理食塩水を子宮内に足していく方法です。この方法により、臍帯圧迫を和らげることが期待できます。

 

 主な対象
  子宮内胎児発育不全(FGR)における羊水過少
  妊娠22週未満における破水は慢性早剥症候群(CAOS)などの羊水過少
  胎児構造異常における肺低形成の予防
    (いずれもまだ研究段階の先進的治療です。)
  分娩時の胎児一過性徐脈による帝王切開術の回避 (経膣式;保険適応あり)
 

          

経膣分娩における人工羊水注入

 経膣分娩の際、羊水量が少ないと陣痛の際にへその緒(臍帯)が圧迫されて、胎児に送られる酸素の量が減少してしまうことがあります。通常の経膣分娩では、胎児の酸素不足は一時的かつ短時間であるため、ほとんどの胎児はそのストレスを乗り越えて生まれることができます。しかし酸素不足が重症化したり長時間持続する場合は、酸素不足により児に悪影響が及ぶ危険性があるため、帝王切開が必要となることもあります。当院では分娩中にそのような児の重症な酸素不足が推測される場合に、臍帯圧迫を解除するために経膣的羊水注入を行っています。経膣的に内側陣痛計を挿入し、そこから暖かい生理食塩水を注入し羊水腔を再び作ることで臍帯圧迫を軽減します。針を使った処置ではないので、痛みはほとんどなく比較的安全に行えます。帝王切開を考慮するような重度の酸素不足が懸念される状況でも、経膣的羊水注入により約80%のケースで帝王切開を回避可能です。

        


超緊急帝王切開 Grade A

 当科ではハイリスクのお産を取り扱っているという施設の特性上、分娩の急変時の迅速な対応に力をいれております。
 どんなお産でもあかちゃんの状態が急変する可能性はあるのですが、発育不全や双胎妊娠の分娩の際は特に、いつあかちゃんが苦しい状況になってもおかしくありません。分娩中のあかちゃんの状態をしっかりと把握して、赤ちゃんが経腟分娩のストレスに耐えられないと判断した場合は速やかに帝王切開に切り替え、元気に生まれてくれる手助けをいたします。時にはあかちゃんの状態が急激に悪化することもあり、そのときは一刻を争う超緊急帝王切開が必要となることもあります。緊急帝王切開が必要となった場合、ハイリスク周産期センターでは一般的に方針決定から30分以内に赤ちゃんを娩出してあげる事が望ましいとされておりますが、実際にそれを24時間実現することは簡単なことではありません。私たちは緊急時に可能な限り速やかにかつ安全に帝王切開が施行できるよう各部門の連携体制を強めております。当院では分娩室でそのまま手術ができる設備も備えており、緊急時はMFICU(母体胎児集中治療室)における分娩室の隣の手術室においてそのまま手術が可能です。麻酔科ともスムーズな連携を行います。医師、助産師、看護師が緊急時にどう対応するのかをシミュレーションも行なっております。

 またとても重要な事は、分娩前に徹底的にリスク評価を行い、起こりえるトラブルを予測することです。発育遅延のあかちゃんでは、発育や羊水の量、様々な箇所の胎児血流や心拍パターンの評価などを細かくチェックし、分娩時にどのような反応を示すのか予測を立てます。ハイリスク分娩はもちろんのこと、当科では妊婦健診中より特にリスクが無い方に対しても、へその緒(臍帯)の走行や付着部位の確認を可能な限り行い、妊娠中から分娩に至るまで臍帯トラブルが起こる可能性を評価しております。
 こうしてハイリスク因子が確認された場合や、双胎分娩など予測困難な急変の可能性がある場合は、慎重な管理の下での計画分娩や、複数の医師が待機のもとでの分娩経過観察を行い、急変時に速やかに対応できるよう心がけております。
 先日、事前に搬送前から「常位胎盤早期剥離」と情報のあった搬送例ではER(救急救命)から直接手術室に移動し、事前に待機していた麻酔科医の協力のもと決定から娩出まで12分での帝王切開を実現いたしました。また事前に「胎児徐脈」しか情報がなかった症例においても、当院到着後、速やかに診断し全身麻酔による帝王切開術にて17分での娩出を実現しました。
 

 

超音波症例勉強会

 我々は毎月、一ヶ月の産科症例の超音波画像に関する勉強会を行っております。検査技師さんが日々のスクリーニングで分からなかった点などを出し合って夕方17:30ごろから1-2時間皆で気楽なフリートークを行います。ですので日々の症例に始まり、教科書に載っていない解剖の話やテクニックなどなど、どんなテーマでも気軽な議論が展開されています。産科超音波を勉強したい方にとっては、技師さん、助産師さん、研修医、専門医取得後であってもとても勉強になると思います。医療関係者の方は自由参加ですのでお気軽にお越しください。
 

周産期におけるこころのケア

 妊娠・出産は家族にとって大きなイベントです。その中で、家族は喜びなどのポジティブな気持ちを抱くだけではなく、精神的に不安定になりやすいことが知られています。とくに産後1週間は誰もが不安になり、気持ちの変化が表れやすいといわれており、産後うつ病となることもあります。当院では、妊娠中から助産師による保健指導の中で、身体のことのみならず、家庭環境などをお伺いし、妊娠・出産後の不安が少しでも軽減するよう面談させていただいています。また出産後にも、担当助産師がお産のふりかえりとともに、産後のお気持ちを伺うための面談を行っています。退院後は産後2週間、1ヶ月健診でのお話をさせていただき、家庭に帰ってからのサポート体制によっては、保健師による家庭訪問(母子サポート)をおすすめしています。不安が強い方には、当院の臨床心理士による面談を受けていただくこともできますので、遠慮なくスタッフにご相談ください。
 またさらに当院では、名古屋大学心の発達支援研究実践センター(妊娠期からのきずなプロジェクト)との共同研究で、インターネットによるアンケート調査も行っております。当院を受診された妊婦さんには、外来初診時に登録用紙を配布させていただいています。携帯電話などからQRコードを読み取ることにより簡単に回答できますので、待ち時間などにぜひご登録頂けますようお願いいたします。これは妊娠初期から妊娠中、産後2年までの計8回、ご自身の状態や赤ちゃんに対するお気持ちを伺うアンケート調査です。パートナーの方にもご同意いただけるようでしたら、同時にご登録ください。1回につきおよそ20-30分程度で回答できます。調査を通して、こころの健康を約3年間見守っていきます。もし心理的な問題や子どもの発達等できになることが出てきた場合には、臨床心理士の電話相談や面談を行うことができます。詳しくは外来で配布する資料をご参照ください。

参考
 医療、養育関係の多職種の方向けの研究会である ぎふ周産期こころの研究会 https://gifuperikokoro.wixsite.com/home) の活動を行っています。今後とも周産期の心の問題に関しても一歩でも前進できるように地域の活性化に向けて研鑽に励んでいきたいと考えています。
 

周産期相談室 

 コロナ禍で厳しい社会環境となっています。そんな中女性のライフサイクルに少しでも寄り添えるよう産婦人科では2021年4月、あたらしいカウンセリング外来を立ち上げました。

お気軽に受診ください。(詳細は産婦人科外来にお問い合わせください。)
 

周産期相談室 詳細はこちら

 

羊水検査、胎児ドックのご案内

 令和元年7月より当院でも羊水検査を行うことが可能となりました。
事前にご夫婦によるカウンセリング、胎児エコーを受けていただいた上で担当医と相談の上、予約が可能です。

 また胎児超音波スクリーニングとして「胎児ドック」も行っております。

 初期スクリーニングであれば11-14週ごろ、胎児構造評価であれば18-20週、28-30週ごろをおすすめしていますが必ずしもその週数でなくても一度ご相談ください。
胎児の向き、母体の腹部の状況次第で所見が得られない場合もございますのであらかじめご了承ください。

詳細は産科外来受付にお問い合わせください。

料金一覧

内容 料金
(税込)
 羊水検査前カウンセリング
  (ご夫婦そろっての受診が必須です)
6,120円
 羊水検査
 

通常 91,660円
FISH法含む
131,290円

 胎児ドック
 (*胎児ドックの場合のみ紹介状はなくても外来予約を取らせていただいております)

単胎 8,150円

双胎 16,300円

 

 

 

最終更新日:2022/10/03